6つの質問が、感謝の気持ちがもたらす人生を豊かにする力を引き出すのに役立ちます。
タイラー・ヴァンダーウェール氏は、週に数回、妻と幼い2人の子供たちと一緒に夕食のテーブルを囲む。食事中に家族はわざと食事の手を休め、シンプルだが深い意味を持つことをする。家族の一人一人が感謝していることをいくつか共有するのです。ハーバード大学公衆衛生大学院の健康・スピリチュアリティ・宗教イニシアティブの共同ディレクターであるヴァンダーウェール氏は、この行為が家族の関係をより良いものに変えると感じているといいます。
「違いを生み出し、非常に効果的な習慣となり得ると思います。」とヴァンダーウェール氏は言います。「人生が困難に思えるような嫌な日でも、その努力は価値があります。」
感謝、健康、長寿
感謝の気持ちが私たちの生活にどのような影響を与えるのでしょうか? 最近の研究では、感謝の気持ちがもたらす健康へのポジティブな影響が数多く指摘されています。その中には、感情面や社会面の幸福感の向上、より質の高い睡眠、うつ病リスクの低下、心血管の健康状態の良好な指標などが含まれます。そして今、長年にわたって実施されてきた看護師健康調査(Nurses’ Health Study)の新たなデータから、感謝の気持ちが寿命を延ばす可能性があることが示されました。
「感謝の気持ちは、幸福度を高める活動として最も広く研究されているもののひとつですが、死亡率や長寿への影響を調べた先行研究はひとつも見つかりませんでした。これは驚くべきことです」と、新しい研究の共著者であるヴァンダーウェール氏は述べています。
この研究では何を調べたのでしょうか?
2024年7月にJAMA Psychiatry(アメリカ医師会発行学術誌「精神医学」)誌で発表された新しい研究では、看護師健康調査に登録した49,275人の女性から得たデータを使用しました。彼女たちの平均年齢は79歳でした。2016年、参加者は6項目の感謝に関するアンケートに回答し、「私は人生で感謝すべきことがたくさんある」、「感謝していることをすべて挙げるとしたら、それはとても長いリストになるだろう」といった内容にどの程度同意するかを順位付けしました。
4年後、研究者は参加者の医療記録を調べ、誰が死亡したかを特定しました。 死亡原因は、心臓血管疾患、癌、呼吸器疾患、神経変性疾患、感染症、外傷など特定の原因によるものだけでなく、あらゆる原因によるものも含め、4,608件でした。 米国では男女ともに死因のトップである心臓血管疾患による死亡が最も多い死因でした。
研究者は何を発見したのでしょうか?
研究の結果は、以下のようなものでした。研究開始時に感謝の気持ちのスコアが上位3分の1に入った参加者は、下位3分の1に入った参加者と比較して、その後の4年間に死亡するリスクが9%低かったのです。これは、身体的健康、経済状況、その他の精神衛生や幸福の側面を考慮した後でも変わりませんでした。感謝の気持ちは、研究対象となったあらゆる死因から参加者を保護するのに役立っているようです。
しかし、これは実際に何を意味するのでしょうか?
「死亡率の9%減少は意味のある数字ですが、それほど大きな数字ではありません」とヴァンダーウェール氏は言います。「しかし、感謝の気持ちを持つことの素晴らしいところは、ほとんど誰でも実践できるということです。誰もが自分の周囲にあるものに気づき、人生における良い出来事に対して他人に感謝の気持ちを表すことができます。
この研究では、感謝の気持ちが長寿と関連する理由を特定することはできませんでしたが、ヴァンダーウェール氏はいくつかの要因が寄与している可能性があると信じています。
「感謝の気持ちを持つことで、人はより幸せを感じます。それだけでも死亡率のリスクを少しは減らすことができます」と彼は言います。「感謝の気持ちを持つことで、健康維持に対する意欲も少しは高まるでしょう。医療の予約にきちんと行くようになったり、運動するようになるかもしれません。また、人間関係や社会的なサポートも健康に貢献することが分かっています。
この研究の限界と強みは何でしょうか?
この研究は観察研究です。つまり、感謝の気持ちが長生きにつながることを証明することはできず、関連性があることだけが示されています。また、分析対象となった特定のサンプルは、この研究の最大の強みであり、また限界でもあります、とヴァンダーウェール氏は言います。分析対象はすべて、高い社会経済的地位を持つ高齢の女性看護師でした。大多数が白人でした。
「長寿効果は男性や若年層、あるいは社会経済的資源が少ない人々にも当てはまるのでしょうか?」とヴァンダーウェール氏は問いかけます。「これらはすべて未解決の問題です。」 しかし、この研究のサンプルの規模が大きいことは、その最大の強みであるとヴァンダーウェール氏は言います。 また、参加者の健康状態、社会的特性、心理的な幸福のその他の側面など、潜在的な交絡因子に関する広範なデータも収集されています。
「データの質とサンプルの規模により、このささやかな長寿効果について、妥当な根拠を示すことができました」とヴァンダーウェール氏は主張します。
試してみましょう: 感謝の気持ちを引き出す6つの質問
今日は特に感謝の気持ちが湧いてこない? そんな気持ちを変える力はあなたにもあります。 自分自身に特定の質問を投げかけることで、感謝の気持ちを引き出すことができます。例えば、
- 今日はどんな良いことがあったか?
- 感謝すべき当たり前のこととは何か?
- 人生で感謝している人は誰か?
- 最後に読んだ本や観た映画、ショー、ソーシャルメディアのクリップで、心から感謝したものは何だったか、それはなぜか?
- 今週、今月、今年、最も楽しみにしていることは何か、それはなぜか?
- 最近誰かが言ってくれた、あるいはしてくれたことで最も親切なことは何か?
同様に、いくつかの簡単な行動によって、日々に感謝の気持ちを吹き込むことができます。ヴァンダーウェール氏の家族の習慣である、夕食のテーブルを囲んで定期的に感謝の気持ちを伝えることを試してみてください。もうひとつよく知られた習慣、それはおそらくデジタル時代に忘れられつつあるものですが、感謝の手紙を書くことです。
「感謝の手紙や礼状を書くことで、より長い期間、ポジティブなことを考え続け、より深く考えることができると思います。言葉だけでなく、文字にして表現しなければならないからです」「また、関係を深め、絆を築くことにもなります」
あまり知られていませんが、感謝の気持ちを表す貴重な方法として、「味わうエクササイズ」と呼ばれるものがあります。これは、マインドフルネスの要素を取り入れたものです。必要なのは、「立ち止まり、周りを見渡し、現在の環境にある良いものすべてを吸収し、楽しむこと」だけです。「良いものに気づくことから、自分が持っているものへの感謝の気持ちを表すことへ移行するのは、それほど大きな飛躍ではありません。」
*ハーバード大学医学部ニュースレターより