米国では成人の10人に1人が、日本では日本人全国民の15人に1人がうつ病に苦しんでおり、抗うつ薬が一般的な治療法となっています。しかし、薬だけが唯一の解決策ではありません。研究によると、運動も効果的な治療法であることが分かっています。「人によっては、抗うつ薬と同等の効果があります。ただし、重度のうつ病の人にとっては、運動だけでは十分ではありません」とハーバード大学医学部の精神医学助教授、マイケル・クレイグ・ミラー博士は言います。
運動の効果
運動をすることで、心臓病や糖尿病の予防、睡眠の改善、血圧の低下など、多くの健康効果をもたらす生物学的な連鎖反応が起こります。 高強度の運動は、エンドルフィンと呼ばれる体内の快楽物質を放出させ、ジョギング愛好家が報告する「ランナーズ・ハイ」をもたらします。 しかし、ほとんどの人にとって、真価があるのは長期間にわたって継続する低強度の運動です。そのような活動は、神経栄養因子または成長因子と呼ばれるタンパク質の放出を促し、神経細胞の成長と新たな結合を促します。脳機能の向上は、気分を良くします。「うつ状態にある人々では、神経科学者たちが、気分を調整する役割を持つ脳の海馬が小さくなっていることに気づきました。運動は海馬の神経細胞の成長を促し、神経細胞の結合を改善することで、うつ症状の緩和に役立ちます」とミラー博士は説明します。
始めることの難しさ
うつ病は、睡眠障害、活力の低下、食欲の変化、身体の痛み、痛みの知覚の増大など、身体的な症状として現れます。 これらはすべて、運動への意欲を低下させる原因となります。 このような悪循環を断ち切るのは難しいですが、ミラー博士は、少しでも体を動かすことが助けになると言います。「まずは1日5分間、ウォーキングや好きな活動から始めてみましょう。 やがて5分間の活動が10分になり、10分が15分になるでしょう。
できること
神経細胞の改善がうつ症状の緩和につながるまでに、どの程度の期間運動を続ける必要があるのか、またどの程度の強度で運動を続ける必要があるのかは不明です。運動を始めてから数週間後には、気分が良くなっているはずです。しかし、これは長期的な治療であり、一度きりで完治するものではありません。「長期間にわたって継続できるものを選びましょう」とミラー博士は助言します。「重要なのは、自分が好きなこと、継続したいと思えるものを選ぶことです。」