人の行動を変えることは、単に「良い情報を伝える」だけでは実現しません。長年の研究から、行動変容には心理的なプロセスがあることが明らかになっています。ここでは、コーチングの現場でよく活用される3つの主要な理論をご紹介します。
目次
①健康信念理論(Health Belief Theory)
この理論は、人が健康行動をとるかどうかは、以下の「認知」によって決まると考えます。
- 認知された脆弱性:「このままでは病気になるかもしれない」という認識
- 認知された重大性:「その病気は深刻だ」という認識
- 認知された利益:「行動を変えれば良いことがある」という認識
- 認知された障害:「変えることには困難も伴う」という認識
- 自己効力感:「自分にはできる」という自信
- きっかけ:行動を起こす具体的な刺激
コーチングでは、クライアントのこれらの認知に働きかけることで、変化への準備を整えていきます。
②変化の超理論的モデル(Transtheoretical Model)
このモデルでは、行動変容は段階的に進むと考えます。コーチは、クライアントが今どの段階にいるかを見極め、その段階に合った支援をすることが重要です。
- 熟考段階:変化を考え始め、メリット・デメリットを整理する時期
- 準備段階:変化の準備はできているが、具体的な計画が必要な時期
- 行動段階:実際に健康的な行動を実践している時期
- 維持段階:6か月以上、健康的な行動を継続している時期
③自己決定理論
人が持続的に変化し続けるためには、次の3つの心理的欲求が満たされる必要があります。
- 自律性:自分の行動を自分で選んでいるという感覚
- 有能感:自分には能力があり、成し遂げられるという感覚
- 関係性:他者とつながり、愛し愛されるという感覚
この理論では、外からの報酬や罰(外発的動機づけ)よりも、自分の内側から湧き出る動機(内発的動機づけ)の方が、長期的な変化につながりやすいと考えます。
これらの理論は、コーチングの対話や戦略の土台となっています。次回は、具体的なコーチングの技法「動機づけ面接」についてご紹介します。



